一瞬の閃き

宝物といえば自分が撮った目黒川の写真のパネルである。
これは大学の頃、学芸員の資格を取得するために実技としてパネル作成の実習で制作したものだ。
その頃、まだデジタルカメラが今ほど普及しておらず、実習では撮影といえばカメラであった。その時、学生ひとりひとりにモノクロのネガフィルムが支給され、次の講義までに撮影してくるようにという課題が出されたのである。
当時、目黒区に住んでいた私は、中目黒駅近くの目黒川沿いでなにかないか探した。目黒川を真ん中から撮ろうと橋の中央に立ち橋の上から川を眺めたところ、一瞬、撮りたい写真が頭の中に閃いたのである。季節は初夏だったのだが、生命感あふれる桜の葉っぱが川を守るように茂っており、そして水面でくつろぐ鳥、さらに桜の葉の向こうには東横線の陸橋が。「これだ!」と思った時に、もうひとつ自分が入れたい構造があった。それは電車である。東横線は本数が多かったので陸橋を通る電車を狙って1枚1枚丁寧に撮影をした。

そしてフィルムを暗室に入って現像した。いくつかの現像液に浸しながら風景が浮かび上がるのを待つ。その時、浮かび上がった感動を今でも忘れない。
周りからも絶賛されるほど期待以上の風景写真が撮れたのである。それを最終的にパネルにした。
今は、部屋が狭いのでそれは出していないが、天才かもって思ってしまうようなも逸品なのである。